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刺し子とは

 刺し子が日本の伝統的な刺し縫いをする針仕事であるということをご存じの方は多いと思います。では、刺しゅうとの違いはなんでしょうか?
 どちらも日々の暮らしに根づいた針と糸を使った刺し縫いの技法を使っていますが、刺しゅうの方が装飾的な意味合いが強いと言われています。糸で布を飾ることを目的としているのが刺しゅう。糸を縫うことで布の耐久性や保温性を高め、本来必要とされる布の機能を補うことを目的としているのが刺し子です。

 約400年前、綿花不毛の東北地方で生まれた刺し子は、寒さと貧困に立ち向かう民の間で、布を大切に長く使い切るための知恵として編み出されました。

 米や海産物と交換するために、布を1日でも長く活かすための刺し子の技術は、男仕事に匹敵するものでした。母から娘へと何代にも渡って技術が伝えられ、競い合って刺しているうちに模様にはいつしか願いがこめられ、日々の暮らしの糧となり、女性たちの日常そのものや、共に生きる大切な存在になっていったと考えられています。

 時代が進むにつれ、刺し子の形も少しずつ変化し、武士階級にも受け入れられていきます。

 今でいう玄関マットのように表玄関に置かれ家を訪れた人に対してはその家の顔となり、農作業をして帰ってくる家人には士族意識を忘れさせないために作り続けられた花雑布。

 婚家の門をくぐったら二度と戻れないといわれていた時代、洗うと糸の色が布に染みていく様子が「婚家に染まる」と例えられ、娘の幸せを願う母の思いをのせた嫁入り道具として持たせたと言われている花ふきん。

 身分や地域を超え、刺し子を刺す女性たちの家族への愛情や他人への見栄等が作りだした文化であったと考えられています。

 物に溢れた現在では、繕って使うという概念自体がなくなりつつあります。古いしきたりにこだわることもなくなりました。素材の開発が進んで高品質、多種多様、カラフルになったことで表現の幅が広がったことや、幾何学模様の愛らしさや伝統模様の美しさが再認識されています。特に刺し子ふきんは、使い捨てを軽減しエシカル思考に寄り添う存在として注目されています。作り方においても、手縫いだけで完結し、難しいソーイングの知識が不要なことから多くの方に広く愛されています。


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