西荻窪教室と新しい講座
2020年2月に行った刺し子会で、初心者の皆さんのお声から背中を押していただき始まった教室形式でのレッスンも、今年で5年目を迎えました。
最初は毎回レッスンのたびにお申込みをいただくスタイルで、コロナ禍にも関わらず足を運んでくださる皆さんには、感謝で胸がいっぱいになります。ただ、刺し子は時間を費やす手芸なので、なかなか1回3時間という短時間で、ある程度ご納得いただくところまでのレクチャーが難しく。単発のワークショップのように作るものが小さかったり、教材をある程度こちらで準備できればよいのでしょうが、やはり「刺し子ふきんそのものを美しく作りたい」という目的を持たれている受講者さんにとっては、3時間では実技でいっぱいいっぱいになり、聞きたいことも聞けないし、私は私でご紹介したいこともしきれないと感じていました。そのため、ほとんど方が一度受講されると繰り返しお越しいただけるようになり、結果的に毎回申込むスタイルをやめてしまいました。しかし、キャンセル待ちの方が数十名単位となり、嬉しいやら申し訳ないやらで、できるだけたくさんの方にお越しいただくにはどうしたらいいかを考えあぐねて、奇数月と偶数月の2種類のクラスを設けて通っていただける人数を増やしてみたりもしましたが、隔月では、レッスンまでの間隔が空きすぎて間延びしてしまい、ご上達の実感を持っていただけない方も中にはいらっしゃったのではないかと思います。そして結果的に、半年を1クールとして6回のレッスンをまとめて申し込めて、半年ごとに更新していくスタイルに落ち着きました。結果的には、他の講座とスケジュールが一元化されたことで、私自身も管理しやすくなって、事務仕事が減りとても助かっているところです。しばらくはこのスタイルでやっていこうと思います。
現在、40名超の生徒さんと月に1度お目にかかっていますが、皆さんのお名前を覚えるのに四苦八苦!大変時間がかかってしまいまして。新しいことを一緒に楽しめるワクワク感とは別として、記憶力の低下…年を感じている今日この頃です。
刺し子教室に限らずの話ですが、習い事、特に、センスの有無よりも時間をかけて頭で理解して体で覚えて研鑽していく要素の強い物事は、長い時間継続する必要がありますね。刺し子も、特別なテクニックを覚えるというよりは、継続することによって気づいたことを自分の中で積み重ねる、という要素がとても大きい気がします。
例えば、本にはよく2~3ミリの針目で…とありますが、定規ではかるわけでもなく、2mmを死守して運針するというのは、誤解を恐れずに言うと無理な話です。そしてフリーハンドだけにいつも同じ針目で縫うということも難しく、同じ人が縫っても、日によって、その日の時間帯によって、手の温かさや冷たさ、心のありさまによっても、変わってくるのが実際のところ。それに、〇ミリと決めたところで、自分の手がそれにしっくりこなければ、長く続けることはできません。それに、寸分狂わない針目で刺されたものが美しいとは限らない。あくまでも無理なく自然体でありつづけられることが刺し子の上達には不可欠だと思っています。
だから、お手本とまったく同じ目数で刺せたものが良い作品、美しい作品なのではなく、軸になるのはいつだって自分自身。いくつも刺していく中で、「大柄の模様はいつもより小さい目で刺しそう」とか「この素材の時は、少し大きい目で刺してみたい」などと言った、いつもの自分が基準となって調整していくことを覚えていけば、どんな図柄を刺したとて、それには自分らしさが宿っていくもの。これは大げさでなく刺し子というのはそういうものだと思います。だから、早く上手にならなければと力を入れすぎずに、そして頑張って上手くなろうとしなくてもよい気がしています。小刻みでもいいからとにかくたくさん刺す。そして自分の針目を知るということが大切なような気がします。
いつもの自分と比べて今日はどうか。いつもより丁寧に刺そうとか、いつもより気楽な気持ちで刺そうとか、そして、同じものを刺すのであっても、何を意識しながら図案を描くか、刺すか。そして、どうなってしまうと下手に見えるのかをよく観察して考えることが大切で。ただやみくもに、何も考えず数さえこなせば良いとスピードを緩めずに猪突猛進するだけなく、省みることが本当に大切で。つまり、何を意識しているかどうかの差が、上達の速度に大きく影響すると思うのです。一つずつ階段を上るように技術を磨いて積み重ね、その積み重ねがあるから、その先でまた磨く必要のある事柄が見えてくる。作るもの、使う素材によってもそのたびに磨くべき事が変わったりもするもので。作品を完成させる楽しさや、完成させた達成感や充足感も大切だけれど、技術が確実に自分に備わってきていることを実感できる目や心を養うのも、続ける醍醐味かと思っています。
カルチャースクールなどでの講座開設は、この数年の間に、東京都内のみならず様々なところからご連絡をいただくのですが、すべてをお引き受けすることが難しいのが心苦しいです。タイミングにもよりますが、元々がんばりが利かない根性無しなので(笑)、欲張らずにできる範囲で余力を残しながらやっていくことが、細々でも長く全力で続けていくための秘訣です。
そんな中ですが、この春4月から、よみうりカルチャー自由が丘校で新しく講座がスタートします。おかげをもちまして2月25日の時点で残席わずかとのこと。ありがとうございます。通う場所が遠距離で断念されたり、時間や曜日の都合が合わなかったり、はたまたキャンセル待ちをしてくださっている方々にお目にかかれるチャンスになったら嬉しいです。
開講中の刺し子講座は軒並み満席となっておりますが、時期によっては空席ができることもありますので、各サイトをこまめにチェックしていただき、キャンセル待ちなどして気長にお待ちいただけたらと思います。
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